理学療法士に限らず、職業選択において、今後その仕事がどの程度需要があるかは気になると思います。
需要が供給より多ければ、その職業は社会に求められているということになります。
社会に求められていれば、当然給料も上がっていきます。
しかし、供給が需要に追い付いてくるに従い、その職業は徐々に陳腐化していきます。
つまり、求める人が減るので、給料が下がっていくことが考えられます。
現在、理学療法士の需給バランスはどのようになっているのでしょうか?
過去10年の理学療法士や高齢者の人数の変化から、需給バランスを考えてみたいと思います。
また、将来の需給バランスも予想しています。
理学療法士を目指している方にとって、今後の職業選択に役に立つものとなると思いますので、ぜひご覧ください。
理学療法士の人数|この10年での変化と現在
理学療法士国家試験の合格者累計をのせてあります。
令和4年現在、理学療法士の累計合格者数は202,423人です。
グラフを見てみると、毎年約1万人ずつ理学療法士の人数が増えていることがわかります。
10年前の平成25年には約11万人だった理学療法士の数が、今年には20万人を超え10年前の約2倍となっています。
この理学療法士の数が急激に増えた要因としては、養成校が増えたことや、理学療法士の認知度が高くなってきたことが考えられます。
では次に高齢者の人数の変化を見ていきたいと思います。
高齢者の人数を見るのは、理学療法の対象となるのが、高齢者が多くの割合を占めるためです。
高齢者の人数|この10年での変化と現在
高齢者の人数については令和4年のデータがなかったので、令和3年までのデータをのせています。
令和3年の65歳以上の高齢者の人数は、3,621万人となっています。
グラフを見ると、ここ10年高齢者の人数は少しずつ増加している傾向がみられます。
また、日本の総人口に対する高齢者の割合は28.9%となっており、今後もこの割合は増加していくものと考えることができます。
では実際に、高齢者の人数に対し、理学療法士の人数はどのように増えてきたのか。
その割合を示していきます。
現在の需給バランス
この図は高齢者の人数を、理学療法士の人数で割った値を示しています。
この理学療法士の人数は累計国家試験合格者から、65歳以上の国家資格保有者を除いた数字を使用しています。
これにより、正確ではありませんが、現在働いている理学療法士の人数をおおよそ算出できると考えています。
高齢者の人数を、現在働いていると推定される理学療法士の人数を割ることで、理学療法士1人当たりに高齢者が何人いるかを計算しています。
平成25年には理学療法士1人に対し、高齢者は289人いるという状態でした。
しかし、令和3年には理学療法士1人に対し、高齢者は190人となっています。
このことから、高齢者の増加に対し、理学療法士の人数の増加率が高くなっているということがわかります。
今後もこの傾向が続くと、理学療法士の人数は明らかに飽和していくということが考えられます。
飽和していくということは、理学療法士の給料が下がっていくということが予想されます。
実際に現在までの理学療法士の年収の推移について調べてありますので、以下の記事もぜひご一読ください。
では、実際に将来の需給バランスはどのようになっていくのか、予想をたててみたいと思います。
将来の需給バランス予想
理学療法士の人数|今後の予想
図は各年における22歳の人口に対して、理学療法士の合格者の割合を示しています。
平成23年はかなり低くなっていますが、それ以外の年ではおよそ0.75%~1.00%の間に収まっています。
この10年での平均は0.83%でした。
仮にこの割合が継続すると仮定し、今後どの程度理学療法士が増えていくのかを考えていきたいと思います。
上の図は現在の人口統計から、それぞれの年齢の人が22歳になった時点で、その人数の0.83%が理学療法士になったと仮定した人数を表しています。
また、理学療法士国家試験合格者の総人数から、65歳以上になった際に引退した人数を引いています。
今から約20年後には理学療法士の人数は363,525人になっていると考えられます。
これは現在の理学療法士の人数の202,423人の約1.5倍になっています。
やはり、今後も理学療法士の人数はかなり増えていくことが予想されます。
次に高齢者の人数の予想を見てみます。
高齢者の人数|今後の予想
今後、日本全体の人口は減少していく一方で、高齢者の数は少しずつ増えていきます。
令和2年には3619万人いる高齢者は、令和22年には3920万人になると推計されています。
しかし、理学療法士の人数の増え方と比較すると、高齢者の人数は緩やかな増加といえそうです。
では実際に、今後の需給バランスの推計はどうなっているのでしょうか?
将来の需給バランス予想
令和3年、理学療法士1人に対する高齢者の人数は190人でした。
令和7年には、理学療法士1人に対する高齢者の人数は161人となり、令和22年には113人となります。
以上より、過去から現在までの傾向と変わらず、今後も理学療法士1人当たりの高齢者の数は減少し続けるという予想をたてることができました。
これから将来においても、理学療法士の需給バランスは悪化していく可能性があると考えられます。
まとめ
理学療法士の将来について、需給バランスの観点から見てきました。
- 理学療法士の人数は今後も増え続けていくことが予想される。
- 高齢者の人数も増えるが、理学療法士の人数の増加率ほどではない。
- 理学療法士1人当たりに対する高齢者の人数は減り続け、今後も需給バランスが悪化する可能性がある。
これは、あくまで高齢者を対象とした需給バランスとなります。
今後理学療法士の仕事をする領域が広がっていくことで、需給バランスの改善を図ることができる可能性もあります。
そのためには、理学療法士ひとりひとりの努力や、選挙への参加も重要と考えています。
理学療法士と選挙のかかわりについても記事にしていますので、ぜひご一読いただければと思います。
今回の記事が、理学療法士を目指している方や、学生の方、そして現在理学療法士の方の参考になれば幸いです。